子供とスノーボードをしていると、「ここを直せばもっと上手く滑れるようになるのに」とか、「こうしたら、もっとスムーズにボードを操作できるようになるのに」と感じることがあると思います。
ですが、その気付いたことをすべて子供に教えたとしても、子供は上手くなりません。逆に、下手になってしまうことすらあります。
私は、スノーボードスクールで働いていたときも「教えすぎないこと」は意識していましたが、最近になって、改めて「教えすぎは良くないなあ」と感じることがあったんです。
そこで今回は、私の体験を交えながら「たくさん教えても上手くなるわけではない」ということについて書いていきます。
滑っている時に意識できることは少ない
結論から先に述べますと、たくさん教えても上手くならないのは、たくさん教えられてもその全てを意識出来ないからです。
例えば、これからバックサイドで止まる練習をする子供に対して、「最初にまっすぐ滑ってから、前足のかかとに体重を乗せてボードを横に向ける」と教えたとします。
そうすると子供は、まっすぐ滑ってから前足のかかとに体重を乗せることは意識して動けます。
ですが、このとき、
「腕を上げてバランスを取る」
「目線は進行方向に向けて下を見ない」
「曲がり始めたら腹筋に力を入れてバランスの取りやすい姿勢にする」
「止まりそうになったら体重を両足に戻してブレーキする」
も大切だと思って、同時に教えたとします。
そうすると、もっと上手くなってくれると思ってしまうのですが、ほとんどの子供はそうではないのです。
というのは、これらのことを同時に教えてしまうと、意識することが多すぎて、肝心な「前足のかかとに体重を乗せる」事への意識が薄くなってしまうんですね。
結果、ボードの向きを変えることすらできなくなってしまい、止まれなくなってしまうのです。
バレーボールでの実体験
このことを改めて実感した体験として、バレーボールを教えてもらっている体験を挙げてみます。
私は、知人に誘われて、30歳を過ぎてから、素人でバレーボールを始めました。
バレーボール部に所属した経験がないのに、経験者と一緒に練習しています。そのため、出来ていないことが多いので、いろいろな人がいろいろなアドバイスをくれます。
ですが、そのアドバイスの全てが、私を上手くしてくれるかというとそうではないのです。
例えばアタック練習の時です。私の場合、上げてもらったトスにタイミングを合わせてジャンプし、ボールを打つだけで精一杯です。
このためか、タイミングの取り方やジャンプする位置などのアドバイスに関しては、教えてもらうと上手くいくことが多いです。
逆に、腕の振り方や狙うコースに関するアドバイスの場合、これらを意識するとジャンプのタイミングを合わせられなくなります。タイミングを合わせることへの意識が薄くなってしまうからです。
その結果、タイミングが合わないので上手く打てなくなってしまうのです。
気づいたことをすべて教えてしまいがち
このように、大人の私ですら、教えられたことのすべてをうまくこなせるわけではありません。
というか、教えられたことのすべてをすぐに出来るようになったら、誰でも明日にはオリンピック選手にでもなれます。
にもかかわらず、教える側は、「こうしたらもっと良くなるのに」ということに気付くと、それを次々と教えてしまいがちなんですね。
そうすると、私がトスにタイミングを合わせることができなくなるように、最も大切なことへの意識が薄くなり、上達が遅れてしまうのです。
教える側も考えて教えていくことが大切
では、どのように教えていけば良いかというと、たくさん教えても上手くなるわけではないということを意識しながら教えていくと良いです。
例えば、最初に例に挙げたバックサイドで止まる練習の場合ですと、まずは「体重を移動してブレーキをする」ということだけ教えます。
具体的には、「前足のかかとに体重を乗せる。曲がってきたら両足のかかとに体重を乗せる」とだけ教えて、「下を見ないこと」や「腕を上げてバランスをとりやすくすること」などは、出来ていなくても教えないのです。
それで、ブレーキが出来るようになってきたら、「次は下を見ないでやってみよう」というように、子供が何を意識すれば良いかを1つか2つに絞って教えていきます。一度にたくさん教えずに、教えたことが出来るようになってから、次のことを教えていくのです。
子供のレベルによって教えることは変わります。ですが、いずれの場合でも、気づいたことをすべて子供に伝えるのではなく、今は子供に何が必要なのかを考えながら教えていくことが大切です。