子供に止まり方を教えるときに、フォールラインを意識して教えていますか?
フォールラインとは、ボールが転がっていく方向のことです。
スノーボードインストラクターなら、教えるときに当たり前のように意識しているフォールラインですが、インストラクター経験がなければ、意識しないと思います。
ですが、初心者の子供に止まり方を教えるとき、フォールラインを意識するかしないかで、子供の上達には大きな差が出ます。
そこで、今回は、フォールラインを意識した教え方について書いていきます。少し難しい内容ですが、知っているのと知らないのでは大きな違いになるので、どうぞお付き合いください。
フォールラインはその場その場で違う
最初にも書きましたが、フォールラインとは、その場にボールを置いたときに転がっていく方向のことです。
ゲレンデで、これが一定方向だと教えるときに意識する必要はありません。ですが、フォールラインは一定ではないんですね。
下の写真をご覧下さい。
これは、ゲレンデを下から撮った写真です。コース全体のフォールラインは1の緑のラインになります。なので、このコースを滑る場合は、基本的には緑の矢印の方向に滑ります。
ですが、初心者の場合には、斜度の緩い2の場所で練習することになるでしょう。2の地点にボールを置くと、青の矢印の方向に転がっていきます。
コース全体の緑の矢印とは、方向が違いますよね。
ちなみに、こちらのほうが見やすいと思うので、赤の矢印も載せました。3の地点にボールを置くと赤の矢印の方向に転がります。緑の矢印とは方向がずれていますよね。
このように、ゲレンデではその場その場で、フォールラインが違うのです。
なぜフォールラインを意識して教えなくてはならないのか
ではなぜ、その場その場で違うフォールラインを、止まり方を教える時に意識しなくてはいけないのかを説明します。分かりやすいように、意識した場合と意識しない場合に分けて説明していきますね。
フォールラインを意識した場合
まず、フォールラインを意識した場合です。
例えば、レギュラースタンスの子供が、上の写真の黒丸4の地点からスタートしてバックサイド(かかと側)で止まる練習をするとしましょう。
フォールラインを意識すると、滑り出す方向は青の矢印になります。
このとき子供の体勢は、下の写真のようになります。
これを正面から見て、ボードに注目した写真がこちらです。
このようにフォールラインに向かって滑り出した場合には、滑走面全体が雪面に接することになります。
止まり方の練習をする場合、直滑降である程度スピードをつけてから止まる動きに入ります。ですが、このとき直滑降が安定しなければ、子供は止まる動作どころではありません。
フォールラインを意識して青の矢印の方向にスタートした場合には、写真のように滑走面全体が雪面に接しているので、広い面積でバランスを取ることができます。そのため、直滑降が安定し止まる動作に入りやすくなります。
また、止まる動作というのは、かかとに体重を乗せることです。
この場合、かかと側のエッジが最初から雪面に付いているので、かかとに体重を乗せやすいです。なので、止まるための動きもしやすいです。
このような理由で、フォールラインを意識して青の矢印方向に滑り出した場合には、止まりやすくなります。
フォールラインを意識しない場合
次に、フォールラインを意識しない場合を見てみましょう。
こちらも、レギュラースタンスの子供が、黒丸4の地点からスタートして、バックサイドで止まる練習をするとします。ただ、その場所のフォールラインではなく、ゲレンデ全体のフォールラインに惑わされて、緑の矢印の方向に滑り出したとしましょう。
このときの子供の体勢は、下の写真のようになります。
これをボードに注目して見たのが、この写真です。
このとき、かかと側のエッジが浮いていますよね。(これは見やすいように大げさに写真を撮っていますが、実際にもこのようにかかとが浮きます)つまり、つま先側のエッジしか雪面に接していないことになります。
さっきも書きましたが、止まる練習では、最初に直滑降をします。フォールラインを意識した場合には、滑走面全体でバランスを取っていましたが、この場合には、つま先側のエッジという狭い面積でバランスをとらなくてはいけません。
そのため、バランスを取るのが難しく、初心者の子供には安定した直滑降がやりにくいです。なので、止まる動作に入りにくくなります。
(緑の矢印方向に滑るのは、斜面を斜めに滑ることになるので、正確には斜滑降といい、直滑降よりも難しい滑り方です)
また、バックサイドで止まる動作とは、かかとに体重を乗せることです。ですが、この場合かかと側のエッジが浮いています。なので、かかとに体重を乗せるのが非常に難しくなります。
(私の長女の場合、このようにかかとが浮いている状態では、転ぶのを無意識に避けるのか、かかとに体重を乗せることすら出来ませんでした)
仮に、かかとに体重を乗せた場合には、下の写真のような体勢になるからです。
これは、スピードがあれば可能ですが、止まることを練習している子供くらいのスピードでは倒れてしまいます。
このように、フォールラインを意識せずに緑の矢印の方向に滑り出すと、直滑降が安定しにくく、また、かかとに体重を乗せにくいので、止まることが難しくなるのです。
以上の理由で、フォールラインを意識するのとしないのでは、同じ止まる練習でも難しさが変わってきます。なので、意識しなければ子供が止まれるようになるのが遅くなります。
そのため、教えるときはフォールラインを意識することがとても重要です。
子供に止まり方を教えるときは、どの方向にボールが転がっていくかを意識し、その方向に滑り出すように教えてください。
ちなみに、緑の矢印方向にスタートしても、バックサイドで止まることは出来ます。ですが、最初はつま先側のエッジに乗っていた体重を、かかと側に移動することが必要になります。
これって、バックサイドの1ターンの動きなんですよ。
ということは、緑の矢印方向にスタートさせると、止まることを練習している子供に対して、ターンをしなさいと言っていることになるんです。
難しい注文ですよね。